中国自動車道で発生した吊り足場崩落事故について
1月27日、中国自動車道のネクスコ西日本による道路工事現場で、吊り足場上で作業していた作業員5名が、何らかの原因で吊り足場の崩落に巻き込まれ、約20メートル下へ転落する事故が発生しました。この事故により、2名が死亡するという痛ましい結果となりました。
建設業における墜落・転落災害の現状
建設業界では、墜落・転落による死亡事故が依然として多く、安全対策の強化が求められています。ここ20年間で、業界全体の安全意識は大きく向上し、フルハーネスの義務化や作業前の危険予知(KY)活動の徹底など、事故防止に向けた取り組みが進められてきました。それにもかかわらず、今回の事故ではフルハーネスを装着していたにもかかわらず、2名が命を落としています。
ネクスコ西日本のような大手企業においても、安全対策は厳格に実施されているはずですが、今回の事故の発生により、その実効性や現場の運用について改めて検証が必要です。事故原因の解明が急がれます。
現場における足場点検の実態
筆者自身も現場で働く職人であり、現場監督として日々安全管理に携わっています。その立場から言えるのは、「足場の安全管理は日々の点検が不可欠である」ということです。
現場では、元請け業者から毎日の点検表が配布され、それに基づいて点検を実施することが求められています。しかし、実際には時間的な制約や作業効率の問題から、点検表に形式的にチェックを入れるだけで、実際の点検が行われていないケースが少なくありません。現場の多くの監督もこの現実に同意するでしょう。
働き方改革の影響で、週末の休業や残業規制が進み、作業時間が限られる中で、安全点検が形骸化していることは大きな問題です。特に近年は地震などの自然災害も増えており、日々の点検の重要性はますます高まっています。現場監督として、作業前の点検が確実に行われているかを厳しく確認し、事故のリスクを未然に防ぐ姿勢が求められます。
事故を防ぐために
今回の事故を教訓とし、以下の点について改めて業界全体で見直しを行う必要があります。
- 足場の安全点検の徹底:点検の実施状況を厳格に管理し、形式的なチェックに終わらせない。
- 安全教育の強化:作業員の安全意識を高め、危険を未然に察知できるようにする。
- 現場監督の責務強化:作業員任せにせず、監督が率先して安全管理を徹底する。
- 最新の安全技術の導入:AIやIoTを活用し、安全対策のデジタル化を進める。
建設業に携わるすべての関係者が、安全対策を再認識し、同じ悲劇を繰り返さないよう取り組んでいくことが求められています。