下水道工事中に発生したマンホール内の死亡事故
7日午前9時半すぎ、秋田県男鹿市で「マンホール内の工事中に3人が酸欠状態になり脱出できない」と110番通報がありました。倒れていたのは20代、40代、60代の作業員とみられ、病院に搬送されましたが、いずれも意識がなかったということです。
まず、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。
この事故の原因は、酸素欠乏や硫化水素の発生によるものと考えられます。こうした事故を防ぐためには、建設業界全体で槽内作業の危険性に関する知識を向上させることが必要です。また、作業環境の安全対策を強化し、資格を持った作業員のみが作業できる体制を整えることが求められます。
毎年発生する酸欠事故
このような酸欠事故は、下水道工事に限らず、タンク内やサイロ内、汚泥処理場、造船業界などでも毎年発生しています。特にプラント事業では酸欠事故が多く報告されており、その危険性は広く知られています。
ニュースでも解説されていましたが、一酸化炭素は無臭であるため、吸い込んだ瞬間に意識を失い、倒れてしまいます。そして、それを目の当たりにした他の作業員が助けに入ろうとして同様に倒れてしまう——この事故もその典型的なケースと考えられます。
人手不足による安全管理の課題
多くの槽内作業では、資格を持った作業員が1〜2名程度しかおらず、残りは無資格の作業員が補助として働くことが一般的です。建設業界全体が人手不足であるため、「手元作業員」と呼ばれる経験の浅い作業員を連れて作業を行うケースが多いのが現状です。
通常の現場では、作業チームは3〜4人一組で編成されます。
- 親方(棒心):業界経験5〜20年の熟練者
- 若手作業員:入社1〜3年の職人
しかし、ひどい会社では、業界経験2年程度の作業員が「親方」として現場を指揮することもあります。こうした経験不足が事故の原因となることも少なくありません。事前の危険予測ができなかったり、焦りによって周囲が見えなくなったりすることが要因となります。また、極度の緊張から前日の夜に眠れなくなることもあり、それがさらなる事故リスクを高めるのです。
事故現場の状況と必要な対策
今回の事故現場を見ても、必要な安全設備が不足していた可能性があります。例えば、**誘引ファンやジャバラ(換気装置)**などが設置されていなかったようです。
こうした事故を防ぐためには、小型酸欠対応ドローンの活用や、入槽前の換気を徹底することが有効です。私が現在関わっている現場では、槽内作業を行う前日に誘引ファンを設置し、12時間以上の換気を行います。さらに、入槽前には資格を持った作業員が2名以上で酸欠測定を行い、安全が確認されて初めて作業が許可される仕組みになっています。これくらい徹底しなければ、槽内作業は非常に危険なのです。
建設業界全体での改善を
今回の事故を教訓に、建設業界全体が槽内作業の危険性を重く受け止め、より徹底した安全対策を講じることが求められます。資格のある作業員のみが作業できる体制を整え、適切な設備とルールを導入することで、酸欠災害を少しでも減らしていくべきです。
これ以上、同じような悲劇が繰り返されないことを願います。